金木犀の香りを香水に使うことの難しさ
秋になると街中に漂う金木犀の香りは、日本人にとって特別な季節の記憶と結びついています。しかし、この香りを香水に使うのは思ったより難しい。採取から処方への組み込みまで、実際に直面した課題を書きます。
金木犀アブソリュートの特性
金木犀(キンモクセイ)の香気成分は揮発性が高く、精油の形では採取が難しいため、溶剤抽出によるアブソリュートが一般的です。ただし、アブソリュートにすると溶剤の残留が気になる場合があり、品質の確認が重要です。
香りの特徴は、フルーティで甘く、少し桃のような印象があります。単体では甘すぎるため、処方の中でバランスを取る必要があります。
「秋の庭」での処方上の工夫
「秋の庭 オードパルファム」では、金木犀アブソリュートの甘さをパチュリのアーシーさで抑え、スモークドシダーウッドで乾いた秋の空気感を加えています。金木犀の比率を上げすぎると、ドライダウンで甘さが残りすぎるため、トップに集中させてミドル以降はウッディに移行する構成にしています。
この処方に落ち着くまでに、2021年の秋から3シーズンかかりました。
毎年変わる原料と、処方の微調整
金木犀アブソリュートは農産物であるため、年によって香りの強さや甘さの度合いが変わります。同じ処方で仕込んでも、原料のロットが変わると微調整が必要になることがあります。
2026年の原料は例年より甘さが強く、パチュリの比率をわずかに上げて調整しました。この微調整の記録は紙のノートに残しています。
金木犀の香りは毎年少しずつ違います。その違いに対応することが、季節限定品を作り続ける理由のひとつです。